この雨で空は澄み、大気は爽やぐ。
秋雲はゆっくりと移り、青空を見せている。
今夜は十三夜。
雲が流れれば、南に浮かぶ名月を愛でられる。
日中は暖かだが、朝は冷える。
うどんの塩分濃度を変えたとたんに麺が不安定になる。
未だ試練は続く。
今をさること6年前。
蕎麦を極めプロの技を掴もうと、そば屋を探すが・・・。
蕎麦学校を終えて決まった就職先は、中央線沿線は神楽坂の近くの手打ちそば屋。
脱サラの親父が経営をしていが、場所柄人の出入りが多く、大規模マンションの中にあるので雨の日は意外と忙しい。
のれんには手打ち蕎麦とうたってはいるが、実は機械練り機械打ち。
お客様が使ったおしぼりを消毒して、キッチンタオルとして遣い回す。
洗った手を前掛けで拭く親父。
奥の座敷はダニに食われる。
店を閉めてシャッターを下ろすと、親父の飼っている大型犬が厨房の中をうろつく。
不衛生きわまりない店でのだめ押しは人使いが荒すぎること。
朝の9時半より仕込み始めて、夜の10時過ぎまで不休で働く。
通しの蕎麦屋といえば、遅くとも8時頃にはのれんをしまうのだが、居酒屋ごときのここは10時過ぎまで営業をしている。
昼過ぎになると単品でコーヒーまでだし、喫茶店の如くなる。
香りにうるさい蕎麦屋がこれでいいのか、
和食の料理人にコーヒーを入れろだと・・・・・・ムカ・・・(-_-メ)。
人手不足で休憩時間はなく、今まで昼の賄いは誰が作っていたのだろう。
各々が適当に何かを食べている。
見るに見かねて賄い番長を名乗りでる。
見習い時代にとった杵柄、冷蔵庫にある食材をフルに活用。
コロッケ・カレー・焼きめし・焼きそば・・・・、残った魚は煮付けで食す。
店のメニューも戴き、天丼・カツ丼・親子丼。
親父に黙って店の食材を使いまくり、従業員は賄いが唯一の楽しみになったとか。
店の料理より、賄い作りに力が入る。
十三夜の月を愛で「無双」と賞したのは宇多法皇か。
徒然なるままに、月をもてあそぶに良夜とす。